小学生の自転車事故で約1億円の賠償命令が!?自転車事故の現状と保険加入について

2018年6月16日

子供やお年寄りまで、気軽に使える自転車。

最近では、健康のために通勤で使っているという人も多いのではないでしょうか?

また、移動手段としてだけでなく、サイクリングなど余暇を楽しむツールでもあります。

さまざまな用途で利用されている自転車ですが、安心安全で快適な自転車利用にはまだ課題が多く、歩行者との接触事故が後を絶ちません。

 

自転車事故の現状

自転車利用が活性化する日本では、特に自転車の対人事故が問題視されています。

これは、自転車事故件数と対人事故割合を示したグラフです。

(参考:警察庁「平成28年における交通事故の発生状況」)

このグラフを見ると、自転車乗用中に起きた事故の件数は、年々減っているのが分かります。

一方で、自転車事故の件数に対する自転車と歩行者の事故の割合は増加傾向にあります。

 

中高生に多い自転車事故

次は、自転車乗用中に起きた事故の死者数を見ていきましょう。

これは、平成20年の自転車事故件数と死亡事故件数を年齢別に表したグラフです。

(出典:内閣府「平成22年度 自転車交通の総合的な安全性向上策に関する調査」)

事故件数が最も多いのは、16歳から19歳です。

次いで7歳から12歳、13歳から15歳の順番となっており、全体的に若年層による自転車事故が多いということが分かります。

 

一方で、死亡事故については75歳以上の高齢者が圧倒的に多くなっています。

これは、高齢者の場合、事故にあった際に重症化するケースが多いことが理由のひとつです。

 

事故の原因となる交通違反

警察庁のデータによると、こうした自転車乗用中の事故のうちの約3分の2は何らかの交通違反が原因とされています。

平成28年に起きた自転車事故の原因となった交通違反で、最も多いのが「安全運転義務違反」です。

これは、事故の40%を占めており、かなり高い割合であることが分かります。

安全運転義務については、道路交通法で次のように示されています。

第70条(安全運転の義務)

車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなけれなならない。

(道路交通法より引用)

道路交通法第70条では、運転者は、状況に応じた正しい装置の操作が求められています。

安全運転義務違反の具体的な内訳は、次の通りです。

 

(参考:警察庁「平成28年における交通事故の発生状況」)

安全運転義務違反の中で最も多いのが「安全不確認」で、半分以上を占めています。

安全不確認とは、十分な安全確認を行わないことです。

例えば、一時停止をしたとしても、歩行者を見落とし、事故に発展した場合は、安全不確認となります。

自分の周りに危険となるものがあるかもしれないという意識を常に持つことが大切です。

 

その次に多いのが「動静不注視」

30.5%を占める動静不注視は、相手に気付いていながらその後の動きに注意しなかったことを意味します。

安全不確認と混同してしまいがちですが、安全不確認は安全確認をきちんと行わなかったために事故相手に気付かなかったり、発見が遅れたりする場合を指しており、動静不注視とは異なります。

例えば、交差点で左折するときに、歩行者がいることに気付いたのに、停止するだろうと判断したため事故に発展したというケースなどが挙げられます。

自分にとって都合の良い判断をし、思い込みによる運転をするのではなく、「かもしれない運転」を行いましょう。

自転車は子どもから高齢者まで誰でも乗れる乗り物ですが、れっきとした車両です。

自転車だからといって交通ルールを軽視してはいけません。

 

自転車事故で高額賠償が求められるケースも…

自転車と歩行者の事故では、被害者に重度の障害が残った場合、高額な賠償が請求されることもあります。

小学生が乗った自転車にはねられて植物状態になったとして、被害女性(67)の家族と保険会社が児童の母親(40)に対し、計約1億600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁の田中智子裁判官は4日、児童の母親に計約9500万円を支払うよう命じた。

判決によると、事故は2008年9月、神戸市北区で発生。時速20~30キロで坂を下っていた小学5年生の男子児童=当時(11)=の自転車と、散歩中の原告女性が衝突。

女性ははね飛ばされて頭を打ち、意識不明の重体となった。

田中裁判官は事故当時、男子児童がヘルメットを着用していなかったことなどから「(母親が)十分な指導や注意をしていたとはいえず、監督義務を果たしていなかったのは明らか」として保護者の責任を認めた。

交通事故に詳しい高山俊吉弁護士(東京弁護士会)は「被害が重大だと自転車事故でも高額な支払いが求められるケースが増えている。自転車事故自体が増える中、裁判所も過失を厳しく捉える傾向にあり、判決は保護者の監督責任を厳しくみたのだろう」と話している。

(神戸新聞NEXT「小学生の自転車事故 母親に9500万円賠償命令 神戸地裁」より引用)

このように、自転車事故で高額の賠償が求められたケースは少なくありません。

自転車であっても過失があれば、しっかりと賠償する必要がありますが、自転車利用者の多くは保険に入っていないため、自己破産する例もあるそうです。

 

自転車保険の加入

自動車の場合、自賠責保険の加入が義務付けられています。

一方、自転車の保険は加入義務がなく、保険加入を義務付けるなど、制度を整備する必要があるとの声が高まっています。

そのような中、2016年7月には、大阪府で自転車保険の加入義務化が始まりました。

義務化の対象となったのは、「個人賠償責任保険」

つまり、自転車の交通事故によって、他人にケガをさせた場合などに備える保険です。

第十二条

自転車利用者は、自転車損害賠償保険等(自転車の利用に係る交通事故により生じた他人の生命又は身体の被害に係る損害を填補することができる保険又は共済をいう。以下同じ。)に加入しなければならない。

(「大阪府自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」より引用)

ただし、自転車の利用者が未成年者の場合は、保護者が自転車保険に加入しなければなりません。

また、大阪府に住んでいなくても、通勤や通学で大阪府内に自転車を乗り入れる場合やレンタルサイクルを利用する場合は、自転車保険の加入義務が発生します。

しかし、自転車保険の加入義務違反での罰則や罰金はありません。

自転車利用者の保険加入状況を把握することが難しいというのが理由のひとつです。

 

まとめ

いかがでしたか?

手軽に利用できる自転車ですが、多くの事故が起きているという厳しい現実があります。

事故はいつ起こるか分かりません。

ちょっとした不注意で相手にケガをさせたり、最悪の場合は死亡させてしまったりするケースがあるのです。

自転車はれっきとした車両です。

万が一に備えて、自転車保険の加入を考えてみてはいかがでしょうか?