シートベルトをつけないと事故の致死率が約14倍上がる!?後部座席のシートベルト非着用の危険性について
万が一の事故の際に安全性を高めるため車の搭乗者に義務付けられているシートベルト。
2016年、一般自動車道における運転者の着用率は98.5%と、ほとんどの方がシートベルトを着用しています。
しかし、後部座席同乗者の着用率はまだまだ低いのが現状です。
みなさんも後部座席に乗るとき、「近い距離だから」「めんどくさいから」とシートベルトを着用せずに乗車することはありませんか?
今回は、後部座席でのシートベルト非着用の危険性についてみていきましょう。
後部座席のシートベル着用率の現状
2016年10月1日から10日にかけて、警視庁とJFAが合同で、全国の一般道路でのシートベルト着用状況を調査しました。
その結果、運転者の着用率は98.5%、助手席乗員の着用率は94.9%でした。
では後部座席乗員の着用率はどれくらいでしょうか?
実は、後部座席同乗者のシートベルト着用率は36%にとどまっているのです。
また、高速道路では、運転者と助手席同乗者の着用率は99.5%と98.0%となっています。
一方、後部座席同乗者の場合は71.8%。
一般道に比べると2倍近い割合ではありますが、後部座席の着用率はまだまだ低いのが現状です。
シートベルト着用の義務化
シートベルトの着用については、平成20年に行われた道路交通法改正で、全座席のシートベルト着用が義務付けられました。
これ以前、後部座席は着用努力義務として扱われていたので、着用していなくても違反にはなりませんでしたが、改正以降シートベルト非着用は違反対象に。
シートベルト着用については、道路交通法の第71条によって定められています。
(普通自動車等の運転者の遵守事項)第七一条の三
1項 自動車(大型自動二輪車及び普通自動二輪車を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定により当該自動車に備えなければならないこととされている座席ベルト(以下「座席ベルト」という。)を装着しないで自動車を運転してはならない。
ただし、疾病のため座席ベルトを装着することが療養上適当でない者が自動車を運転するとき、緊急自動車の運転者が当該緊急自動車を運転するとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
2項 自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(当該乗車装置につき座席ベルトを備えなければならないこととされているものに限る。以下この項において同じ。)に乗車させて自動車を運転してはならない。
ただし、幼児(適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するものを除く。以下この項において同じ。)を当該乗車装置に乗車させるとき、疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者を当該乗車装置に乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
これを要約すると、運転手はもちろん、後部座席の同乗者にもシートベルトを着用させていないと運転してはいけないということになります。
ただし、後部座席に乗っている人がシートベルトをしていない場合の罰則について、一般道では口頭注意に留まることが多く、法律の抑止力がありません。
これが後部座席でのシートベルト着用率が低い理由の一つだと考えられています。
座席にシートベルトの装置が取り付けられている場合、後部座席でもシートベルトを着用しなければ違反となります。
タクシーやバスの後部座席に乗車する場合にも、シートベルトを必ず着用するようにしましょう。
シートベルト非着用の危険性
下のグラフは、座席別にシートベルトの着用有無と致死率の関係を表したものです。
(出典:警察庁交通局「平成26年中の交通事故の発生状況」)
自動車乗車中のシートベルト非着用者の致死率は、着用者の0.16%に対して14.3倍の2.30%となっています。
これを座席位置別にみると、運転席で56.5倍、助手席で15.2倍、後部座席で4.8倍となります。
(出典:警察庁交通局「平成26年中の交通事故の発生状況」)
これは、座席別にシートベルトの着用有無と車外放出率の関係を表しています。
自動車乗車中で車内から車外へ放出された場合の致死率は、シートベルト非着用者が車外放出になった割合は、着用者の1.3%に対して14倍の18.5%です。
特に後部座席についての車外放出率は、運転席・助手席より著しく高いことが分かります。
シートベルトを着用しないことによって、車外に放出される危険性が高くなるのです。
車外に放り出されると、路面に体をぶつけたり、後続車両にひかれたりすることで、最悪の場合、命を落としてしまいます。
また、後部座席のシートベルト非着用は、車外に放出される危険性が高くなる他にも、次のような危険性があります。
車が時速40kmで走行中、前の座席などに衝突したとき、後部座席に乗っている人が受ける衝撃は、ビルの3階から落下したときの衝撃とほとんど同じになり、自分の体重の約30倍の力がかかります。
つまり、体重60kgの人の場合、約1.8トンの力がかかることになるのです。
後部座席の乗員が負傷する危険性はもちろんのこと、前の座席の乗員もエアバックと後部座席の乗員に挟まれ、胸部を圧迫して重傷を負う危険性があります。
シートベルト非着用による死亡事故
シートベルトを着用していない場合、事故にあった際の致死率は大幅に上がります。
2016年、長野県でスキーツアーバスが道路わきに転落した事故でも乗客がシートベルトを着用していなかったことが指摘されています。
長野県軽井沢町の国道18号「碓氷バイパス」入山峠付近でスキーツアーバスが道路脇に転落し14人が死亡、26人が重軽傷を負った事故で、遺体やけが人の事故直後の状況などから、多くの乗客がシートベルトを着用していなかったと県警軽井沢署捜査本部はみている。
シートベルト着用は道路交通法で義務づけられているが、バスの場合、一般道では非着用に対する罰則がない。
事故が15日未明の就寝時間帯に起きたことも非着用の要因とみられ、被害拡大につながった。
着用していたとしても、事故の衝撃で抜けてしまった可能性もありますが、乗車時などにシートベルト着用を促すアナウンスはなかったとの証言もあり、着用意識の低さが問題視されています。
シートベルトの着用が命を救った例
一方、シートベルトの着用が命を救ったケースもあります。
愛知県新城市の東名高速道路で10日、中央分離帯を飛び越えた乗用車が観光バスに衝突した事故で、14日に記者会見したバスガイド、山本梅予さん(60)は乗客に対し事故前に3回、シートベルト着用を呼び掛けていたことを明らかにした。
バスの乗員・乗客計47人のうち45人が負傷したが死者は出ず、ベルト着用が被害拡大を防いだとみられる。
梅予さんは「事故に遭わないと大切さが分からないが、皆さんがきちんと着けてくれてありがたい」と話した。
バスガイドの山本さんは、運転手の夫とともに乗客の乗車後とあいさつ時、東名高速に入る直前の3回、シートベルトの着用を促しており、乗客同士も「ベルトをしようね」と声を掛け合っていたそうです。
山本さんは、運転手2人と乗客13人の計15人が死亡し、多くの乗客がベルト非着用だった疑いを指摘される、上記にある長野県軽井沢町のスキーツアーバス転落事故を受け、社内でベルト着用の重要性を再認識していたとのことでした。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、後部座席のシートベルト非着用の危険性についてみていきました。
後部座席でシートベルトを着用していない場合に事故が起こると、車内のあらゆるところに全身を打つ危険や車外に放出される危険が伴います。
また、体が前の座席に当たり、その衝撃で前の座席の乗員にけがを負わせる危険性もあるのです。
シートベルトの着用は全席義務化されています。
「いつもしていないから大丈夫」「罰則がないからしなくてもいい」と考えるのではなく、自分や同乗者の命を守るためにも正しく着用するようにしましょう。