冬型事故、原因の8割はスリップ?見えない恐怖「ブラックアイスバーン」とは
気温の低い冬は、路面凍結によるスリップ事故のリスクが高まります。
特に危険なのが「ブラックアイスバーン」。
見た目では凍結していると分かりにくいため、毎年事故も絶えません。
今回は、通常のアイスバーンとは異なる、ブラックアイスバーンの危険性や注意点などについて解説します。
まだまだ厳しい寒さの続くこれからの時期、万が一の事故を防ぐためにもぜひ覚えておきましょう。
ブラックアイスバーンの恐怖
積雪路や凍結路での運転には危険が伴いますが、特に注意が必要な「ブラックアイスバーン」。
そもそもアイスバーンとは、雨や雪が降った後、道路上の水分が凍り付く現象です。
これはドイツ語からきた言葉ですが、本来の意味は路面凍結ではありません。
ドイツ語における「Eisbahn」とは「スケートリンク」を指しています。
通常のアイスバーンであれば、雪が積っているため、路面が凍っていることも明らかで、ドライバーも注意を払います。
一方、ブラックアイスバーンの場合、路面に薄い氷の膜ができ、単にアスファルトが黒く湿っている状態に見えるため、一見凍結していることに気付かないことも多く非常に危険です。
つい油断しているうちにハンドルを取られ、スリップしたということにもなりかねません。
冬の事故原因「スリップ」が8割
積雪や凍結した路面の多い北海道では、冬期特有の交通事故が発生します。
まずは、1997年度から2006年度までに北海道で発生した冬型事故について見ていきましょう。
冬型事故というのは、スリップ、わだち、視界不良、その他の4つの要因に分類されます。
次のグラフは、北海道の一般国道で発生した9,653件の冬型事故の内訳です。
このグラフを見ると、冬型事故の大部分をスリップ事故が占めていることが分かります。
雪道に慣れているはずの北海道でも、滑りやすい路面での運転は難しいのです。
スリップによる事故は昼間に多い
次は、北海道で同期間内に発生したスリップ事故についてみていきます。
このグラフは、スリップ事故の昼夜別発生割合を示したものです。
8,097件の事故のうち、昼間に発生したのは61.4%、夜間に発生したのが38.6%を占めていました。
北海道警察の発表によると、特にスリップによる交通死亡事故が多い時間帯は「6時から10時」「16時から18時」だそうです。
カーブでのスリップは重傷・死亡につながる
また、スリップ事故発生個所を事故内容別に見ると次のようになりました。
死亡、重傷、軽傷のどの事故においても一般単路、つまり平坦な直線道路での事故が半分を占めていることが分かります。
軽傷事故の場合、カーブでの発生割合は1割程度となっているものの、死亡・重傷事故では3割を超えています。
つまり、カーブでスリップ事故が発生すると、重傷や死亡事故につながる可能性が大きくなるのです。
ちなみに、スリップによる交通死亡事故は、正面衝突がその7割を占めているそうです。
カーブでの死亡事故件数は2倍
次に、2014年中の交通死亡事故発生個所を乾燥した路面や積雪のある路面、凍結した路面といった状態別に見てみましょう。
積雪路ではスリップ事故同様、平坦な直線での事故が半数を占めています。
一方、凍結路ではカーブでの死亡事故が多く、乾燥路や積雪路に比べると、2倍もの数値です。
積雪路や凍結路では直線の道路であってもブレーキを踏んだときにスリップしやすく、特に凍結路ではカーブでの事故が多くなっているため注意が必要です。
ブラックアイスバーンの制動距離
JAF(一般社団法人・日本自動車連盟)では、ブラックアイスバーンに対する注意を促すために次のような実験を行っています。
この実験では、ウェット、圧雪路、氷盤路、ブラックアイスバーンの4種類の状態で、それぞれブレーキが効き始めてから車が停止するまでの制動距離を比較しています。
その結果は次の通りです。
ブラックアイスバーンの場合、ブレーキを踏んでもすぐには止まれず、氷盤と同じように路面を滑ってしまうのです。
さらに厄介なのが、ブラックアイスバーンとウェット路面では「見た目でほとんど区別ができない」こと。
みなさんは、どちらがブラックアイスバーンかわかりますか?
正解は、上がブラックアイスバーン、下がウェット路面です。
このように、ドライバーから見ても判断が難しいのです。
万が一の事故の防ぐためには、雪が積もっていないからといって油断してはいけません。
これからの時期、路面が濡れているときはブラックアイスバーンを想定し、急ブレーキや急発進、空加速など、「急」の付く運転は行わないようにしましょう。
まとめ
スリップ事故が発生しやすく、非常に危険なブラックアイスバーン。
積雪路や凍結路での運転で焦りは事故につながります。
いつもより早く家を出るようにし、時間にも心にも余裕をもって運転しましょう。
特にカーブの手前では十分スピードを落とし、前の車両との車間距離も普段より長くとることを心がけてくださいね。