交通事故にあってからぐっすり眠れない…交通事故後の不眠症と後遺症について

2018年6月16日

交通事故にあってからなんとなく寝つきが悪い…

むち打ちが痛くてぐっすり眠れない…

事故後、このような症状でお困りではありませんか?

交通事故による精神的なショックやむち打ちなどの身体的な障害による痛みから「不眠症」につながるケースが少なくありません。

深刻な不眠症は、日常生活に大きな影響を与えてしまいます。

今回は、交通事故と不眠症についてみていきましょう。

 

日本人の7割が睡眠に問題あり!?

ストレス社会といわれる現代、不眠に悩む人は年々増加しています。

(出典:平成27年国民健康・栄養調査報告―厚生労働省)

不眠の症状はただ眠れないというだけではありません。

このグラフを見ると、なんらかの不眠の症状に悩まされている人はかなり多いということが分かります。

睡眠に問題がないと答えた人は全体の30%程度しかいないのです。

 

不眠度セルフチェック

まずは、ご自身の状態を知ることから始めましょう。

下のサイトで簡単に不眠度を測ることができます。

不眠度についての「セルフドクターズチェック」―セルフドクターネット

今はまだ大丈夫という方でもちょっとした出来事やストレスで不眠症につながる可能性もあります。

不眠は体の免疫力や抵抗力を弱めたり、集中力を低下させたりしますので、十分に注意が必要です。

数分でチェックできますので、ぜひやってみてくださいね。

 

不眠症4つのタイプ

一言で不眠といっても、その症状はさまざまです。

不眠症は、症状によって次の4つのタイプに分けられます。


1.入眠障害
2.中途覚醒
3.早朝覚醒
4.熟眠障害


 

【不眠症のタイプ】

1.入眠障害

入眠障害とは、布団に入ってもなかなか寝付くことができない状態です。

次の2つに当てはまっている場合、入眠障害の可能性があります。

・寝付くまでに、30分から1時間以上かかる
・寝つきの悪さに苦痛を感じ、日中の活動に悪影響が出ている

寝付くまでにどれだけ時間がかかろうと、それを苦痛と思っていない人もいるでしょう。

その場合は入眠障害には当てはまりません。

次に挙げる中途覚醒や早朝覚醒は、年齢が上がるほど症状を訴える人が多くなるのに対し、入眠障害は年齢による影響をうけません。

不安や緊張などの精神的な問題があるときに起こりやすいといわれています。

 

【不眠症のタイプ】

2.中途覚醒

夜中に何度も目が覚める場合は、中途覚醒タイプに分類されます。

不眠の症状の中で、もっとも多く訴えられ、特に中高年でより頻度が高くなるといわれています。

中途覚醒が何度も起こると、それだけ睡眠時間が削られることになり、脳や体の疲労が完全には回復されないため、常に眠気を感じるようになってしまいます。

また、中途覚醒は自覚しやすい症状でもあるため、中途覚醒が精神的なストレスとなり、さらに眠りが阻害される可能性もあります。

 

【不眠症のタイプ】

3.早朝覚醒

不眠症の中で高齢者によくみられるのが早朝覚醒タイプです。

これは、予定よりも早く起きてしまうというもので、次の2つに当てはまる場合、早朝覚醒の可能性があります。

・予定よりも2時間以上早く目が覚める
・一度目が覚めると、その後なかなか眠れない

早朝覚醒の原因として、加齢の他には、うつ病が多いとされています。

 

【不眠症のタイプ】

4.熟眠障害

睡眠時間は十分にあったはずなのに、熟睡感がない場合は、熟眠障害の可能性があります。

入眠障害や中途覚醒に比べると患者数は少ないですが、熟眠障害とまではいかなくてもなんとなく寝足りない…、体の疲れがとれない…と感じている方は多いのではないでしょうか?

とはいっても睡眠薬を使えばしっかり眠れるだろうと、薬の服用を考える方もいるかもしれません。

しかし、熟眠障害の場合、睡眠薬はあまり効果を発揮しません。

それは、睡眠薬があくまでも睡眠を誘導するためのもので、睡眠を深くしてくれるものではないからです。

(参考:4つに分類される不眠の症状―快眠ジャパン)

 

不眠症の原因

不眠症の原因は、人によっても様々ですが、大きく次の5つに分けられます。


1.心理的要因
2.身体的要因
3.生理学的要因
4.精神医学的要因
5.薬理学的要因


 

【不眠症の原因】

1.心理的要因

不眠で悩む人の多くが、この心理的要因によって不眠症を引き起こしているといわれています。

心理的要因というのは、不安や緊張、ストレスなどを指しますが、その中でも多いのがストレスです。

ストレスが不眠につながる背景には、「自律神経系」と「内分泌系」が深く関係しています。

自律神経は、活動時に働く交感神経とリッラクスしている時に働く副交感神経がバランスを保ちながら、私たちの生命維持にかかわる基本的な機能を調整する役割を果たしています。

強いストレスを受けると、脳からの命令によって交感神経の緊張が高まり、アドレナリンが分泌されます。

その結果として、心拍数が上がったり、筋肉が緊張したりして眠れなくなるのです。

一方、内分泌系は、ホルモンを分泌することによって体の機能を整えています。

ストレスを受けると、副腎皮質ホルモン(抗ストレスホルモン)が分泌されますが、このホルモンは交感神経を刺激し、体を緊張状態へ導きます。

これは体がストレスと戦うための臨戦態勢に入った状態であり、そのため、目がさえて、眠れなくなるのです。

また、睡眠不足によって脳が疲れていると、ストレスをより感じやすくなり、さらに不眠へとつながってしまいます。

交通事故にあった場合、保険会社や加害者との交渉、体の痛みや体調不良などから多くのストレスを抱えることとなります。

そのため、交通事故が原因で不眠症を患ってしまうケースも少なくありません。

 

【不眠症の原因】

2.身体的要因

体の痛みなどの身体的要因によって不眠症が引き起こされることもあります。

授業や会議の最中、睡魔に襲われたとき、ほっぺたをつねったり、辛いガムをかんだりしてなんとか眠らないようにした経験はありませんか?

このように、痛みなどの刺激を与え、睡魔を防ごうとする行為はほとんどの方が経験していると思います。

しかし、眠ろうとしているときに自分の意志とは関係なく痛みが襲ってきた場合は、授業中や会議中などに、なんとか眠気を覚まそうとするのと同じような状態になります。

そして、これが何日も続くと不眠症になってしまうのです。

 

【不眠症の原因】

3.生理学的要因

環境の変化や温度、湿度、音、光などの生理学的要因によっても不眠症が引き起こされることがあります。

具体的には、夜勤で昼夜が逆転しているケースや海外旅行で時差ぼけが起きているケースなどが挙げられます。

 

【不眠症の原因】

4.精神医学的要因

精神医学的要因とは、うつ病や統合失調症、神経症などの精神疾患が原因で不眠症が引き起こされる場合を指しています。

精神的に不安定で脳が興奮した状態が続くこれらの精神疾患を持つ方で不眠症を訴える方は少なくありません。

不眠症が精神医学的要因によって引き起こされているケースでは、専門医に相談し、原因となっている精神疾患の治療に努めましょう。

 

【不眠症の原因】

5.薬理学的要因

・ニコチン
・カフェイン
・アルコール

これらは、睡眠を妨げるものとして知られています。

ニコチンやカフェインは、覚醒作用があるため、眠りの質を低下させてしまいます。

眠る前にこれらの物質を摂取するのは避けた方が良いでしょう。

アルコールは睡眠を深くしてくれると考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

実はこれ、非常に多くの人がしている勘違いです。

たしかに、アルコールは寝つきを改善してくれるため、一見すると良い影響を与えているように感じてしまいます。

しかし、睡眠中に効果が切れると、反動の離脱症状が出るため、中途覚醒の原因になり、睡眠の質を低下させてしまうのです。

薬にも睡眠に悪影響を与えるものはたくさんあります。

他の病気で薬を服用するときは、その副作用として不眠の症状が出ないか主治医に確認するようにしましょう。

(参考:不眠症の5つの原因と2つの具体的な対処法【医師監修】―Fuminners(フミナーズ))

 

不眠症は保証の対象になるの?

ここでは、不眠症の原因として挙げた「生理学的要因」について詳しくみていきましょう。

交通事故にあうと、ショックやストレスからPTSDやうつ病を発症することがありますが、それらの症状として不眠症が挙げられます。

不眠症は、疲労の蓄積や免疫力の低下など、日常生活に重大な影響を与えかねません。

また、集中力や注意力の低下も招き、さらなる事故を引き起こす可能性もあるのです。

このように、交通事故が原因でPTSDやうつ病、不眠症が引き起こされた場合、補償の対象になるのでしょうか?

事故後、約3割の人がこれらの精神的な症状を訴えると言われています。

しかし、これらの精神疾患は完治するとは限りません。

何年たっても症状が改善されない場合もあり、そのようなケースでは、慰謝料請求や後遺症障害の等級認定請求を考えなくてはなりません。

交通事故が原因で引き起こされたPTSDやうつ病にも、治療費や慰謝料などが支払われます。

では、後遺症についてはどうでしょうか?

後遺障害の東急認定基準は、身体的な疾患が多いため、疑問を持つ方も多いでしょう。

PTSDやうつ病などの非器質性精神障害においては、身体的な後遺障害とは別の後遺障害等級認定基準があります。

【障害等級認定の時期】

PTSDやうつ病などの非器質性精神障害については、十分な治療をした結果、完治ではなくても症状がかなり改善している場合には、治癒状態にあるものとして障害等級の認定を行います。

ただし、治療を行っているのにもかかわらず重い症状が続く場合は、原則治療を継続します。

【障害等級認定の方法】

①のような精神症状が残った場合、②能力に関する判断項目について、③の判定結果を踏まえて、障害等級を認定します。

①精神症状

抑うつ状態
不安の状態
意欲低下の状態
慢性化した幻覚・妄想性の状態
記憶または知的能力の障害
その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)

②能力

身辺日常生活(a)
仕事・生活に積極性・関心を持つこと
通勤・勤務時間の遵守
普通に作業を持続すること
他人との意思伝達
対人関係・協調性
身辺の安全保持、危機の回避
困難・失敗への対応

③判定結果

できない
しばしば助言・援助が必要
ときに助言・援助が必要
適切またはおおむねできる

【障害等級】

PTSDやうつ病などの等級非器質性精神障害の後遺障害等級は、その精神障害の程度に応じて、次の3段階に区分されています。

9級:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの

・就労している、または就労の意欲がある者
②の判断項目のうち、a以外の1つの能力が失われている場合
または、②の判断項目の4つ以上について、しばしば助言・援助が必要と判断される障害を残している場合

・就労意欲の低下、または欠落によって就労していない者
②の判断項目のaについて、ときに助言・援助を必要とする程度の障害が残っている場合

12級:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの

・就労している、または就労の意欲がある者
②の判断項目の4つ以上について、時に助言・援助が必要と判断される障害を残している場合

・就労意欲の低下、または欠落によって就労していない者
②の判断項目のaについて、適切またはおおむねできる場合

14級:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの

②の判断項目の1つ以上について、時に助言・援助が必要と判断される障害を残している場合

【ポイント】

医学的な立証

PTSDやうつ病などの非気質性精神障害を後遺障害として認定してもらうためには、まずはそれらの症状を医学的に立証しなければなりません。

精神疾患は、身体的な症状と異なり、レントゲンやMRIなどによって、客観的に症状があることを示すのは不可能です。

そのため、精神疾患を発症した場合には、早めに専門の精神科医にかかることが大切です。

専門医師のもとで適切な治療を受けても症状が良くならない場合、医師が改善の見込みがないと判断すれば、後遺障害として認められる可能性があります。

事故後すぐに適切な治療を受けていなければ、後遺障害が認定されないこともありますので、事故後すぐに適切な医療機関で治療を受け、医学的に症状を証明できるよう準備しましょう。

PTSDやうつ病などのケースでは、身体的疾患と比べて一生治らないと判断することが難しいため、症状固定の時期も問題になります。

そこで、適切な治療が行われていたにもかかわらず、症状が改善しなかったという証明が必要です。

このように、治療を続けた結果、医師によって、回復の見込みがないと判断された場合、症状固定として後遺障害の等級認定が受けやすくなります。

また、事故との因果関係も争点になります。

もともとストレスを抱えやすい性格であったり、うつ傾向があったりした場合には、それらが影響して症状が悪化している可能性も考えられます。

交通事故と症状との因果関係を証明するためには、他の要因が影響していないことを適切に示す必要があります。

例えば、交通事故以外に精神症状にかかる理由が見当たらない、それまでの家族や友人関係で特に問題がなかったなど、1つ1つ指摘していかなければなりません。

(引用:神経系統の機能および精神の障害に関する障害等級認定基準について―厚生労働省)

 

不眠症改善!睡眠12か条

最後に、厚生労働省が発表した不眠症を改善するための『睡眠12か条』をご紹介します。

~睡眠12箇条~

1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時間は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

(引用:健康づくりのための睡眠指針2014-厚生労働省)

 

まとめ

いかがでしたか?

日常生活にも重大な影響を及ぼす不眠症は、交通事故によっても引き起こされる可能性があることがお分かりいただけたと思います。

また、交通事故が原因で、PTSDやうつ病になった場合には、身体的な後遺障害とは別の問題があるのです。

事故後、気分がすぐれず落ち込みが続いている、フラッシュバックが起こる、眠れないなど、精神の不調を感じているなら、まずは一度、交通事故問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。