睡眠不足は飲酒運転よりも危険!?悲惨な事故を招く「過労運転」とは

2018年6月16日

長時間の移動や徹夜明けなど、車の運転中に疲れを感じたことはありませんか?

そのような状態での運転は、「過労運転」という違反として処分の対象となることがあります。

近年、大型バスやトラックの運転者の過労による事故が多く報道されていますが、これは私たち一般のドライバーにとっても無関係ではないのです。

 

体調不良時の運転も違反に!?

車の運転には、道路状況に応じた適切な判断や操作が求められます。

そのため、運転者は心身ともに健康でなくてはなりません。

とはいっても、日々の生活で疲れやストレスは溜まっていくものです。

これらが過度に蓄積された状態での運転は、悲惨な交通事故につながる危険性があり、道路交通法でも禁止されています。

 

道路交通法第66条(過労運転等の禁止)

何人も、前条第一項に規定する場合(酒気帯び運転)のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。

 

では、どのような状態を過労と呼ぶのでしょうか?

実は、これには明確な定義がありません。

しかし、睡眠の量的・質的な不足や生体リズムの乱れ、長時間・高負荷の活動は過労の原因となります。

 

道路交通法第66条によれば、風邪薬などの服用時はもちろん、体調不良時での運転も交通違反になる可能性があるということに注意してください。

 

1回でも免許取り消しに!?過労運転の罰則

過労運転によって事故を起こした場合の「反則点数は25点」

これだけでもいかに危険な運転かが分かります。

25点というと、一発で免許取り消しになってしまう点数です。

 

そのうえ、2年間の欠格期間が適用され、その間免許を再取得することはできません。

 

麻薬や大麻、覚せい剤などを除き、過労や病気によって正常な運転ができないおそれがある状態で運転した場合は、「3年以下の懲役、または50万円以下の罰金」に処されます。

 

会社側の責任が問われることも…

事業主や管理者が運転者に対して過労運転を強制したり、容認したりすることも道路交通法で禁止されています。

この場合も同様に、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処されることがあります。

また、事業主には刑事罰だけでなく、営業停止処分や車両使用制限命令といった行政処分が科せられる可能性もあります。

 

最近ではトラックの運転者の過労による事故も多く報道されるようになり、厚生労働省は運送業にかかわる運転者の勤務状況改善のために次のような基準を定めています。

 

【拘束時間(労働時間と休憩時間の合計)】

・1か月原則293時間以内
・1日13時間以内を基本とし、延長する場合は16時間が限度
・1日の拘束時間を延長する場合でも、15時間を超える回数は1週間につき2回まで

 

【休息時間(勤務と次の勤務の間で労働者にとって自由な時間)】
・1日継続8時間以上

 

【運転時間】
・2日平均して9時間以内
・2週間平均で1週間44時間以内

 

【連続運転時間】
・4時間以内
・運転の休憩は少なくとも一回につき10分以上、かつ合計30分以上

 

【休日労働】
・2週間に1回以内

 

運転者の勤務状態がこの基準から大きく逸脱していた場合、その使用者の責任が追及され、処分を受けるケースもあります。

 

過労運転で美作の運送会社を処分 中国運輸局、県内初

中国運輸局は29日、トラック運転手の過労運転を防止する措置が適切でなかったとして、ヒガシマル運輸(鹿児島県日置市)の岡山営業所(美作市竹田)に対し、貨物自動車運送事業法に基づき、同日から30日間の事業停止など行政処分をしたと発表した。処分は23日付。

岡山運輸支局によると、津山労基署の通報を受け、2016年3月に監査を実施。運転手12人の同年2月分の運行記録などを調べると、拘束時間(1日最大16時間、月293時間)や運転時間(2日を平均して1日当たり9時間)といった複数の項目で、労働時間に関する国の基準を超える法令違反が多く確認された。拘束時間が月450時間を超えるケースもあった。

2月28日から20日間、トラック1台の使用停止も命じた。

同営業所は取材に対し「処分を厳粛に受け止め、労働時間の管理の徹底に努めたい」とした。同営業所のトラックによる事故などは起きていない。

中国運輸局によると、過労運転を巡る事業停止の行政処分は県内で初めて。中国地方では本年度4件目。

 

(引用:2018年01月29日山陽新聞デジタル)

 

このように過労運転は運転者本人だけでなく、事業主や管理者も処罰の対象となります。

そのため、会社のイメージダウンや信用失墜から事業存続の危機にも繋がりかねません。

 

短縮睡眠のツケは大きい

残業やテスト勉強で徹夜をしたことがあるという方は多いでしょう。

そんなとき、1日中頭がボーっとしたり、なかなか作業が進まなかったりしますよね。

徹夜が体に悪影響を与えることはみなさんご存知かと思います。

しかし、2時間くらい睡眠が短くなっても問題ないと考えてはいませんか?

 

睡眠時間を短縮した際の影響についての研究が近年盛んに行われています。

ある実験では、4つの睡眠時間を設定し、それらを1週間続けたときの作業能力に及ぼす影響を調べました。

作業能力の指標として、視覚刺激が示されてから0.5秒たっても反応できなかった場合を見落とし回数としてカウントしています。

その結果は次の通りです。

9時間睡眠では、見落としはほとんどありません。

しかし、2時間短縮するごとに増え、5時間睡眠での見落とし回数は7時間睡眠の2倍近くです。

また、9時間睡眠の場合が平坦な線グラフになっているのに対し、それ以外は右肩上がりの線グラフになっています。

このことから、睡眠時間を短縮すると作業能力は日々悪化することが分かります。

 

このグラフでは、短縮時間によって低下した作業能力がどのように回復するかについても示されています。

回復日では8時間の睡眠を3日間続けましたが、9時間睡眠とその他の場合を比べると見落とし回数に大きな開きがあります。

つまり、たまってしまった短縮睡眠のツケはなかなか返せないのです。

 

不眠での作業能力は飲酒運転よりも低い

実は、長時間覚醒状態が続く際の作業能力は飲酒と同程度だとされています。

これは、不眠による疲労と作業効率を調べた実験結果です。

図の左縦軸は作業の成績を、折れ線グラフは時間経過に沿った作業成績を示しています。

右縦軸は血中アルコール濃度で、図を横切る赤い線は、日本で酒気帯び運転の基準とされているアルコール血中濃度0.03%で作業をした場合の平均成績です。

起きてすぐの作業成績も酒気帯び運転基準より低くなっていますが、経過時間が13時間を超えたあたりから、作業成績が急激に悪化しています。

不眠状態を維持した場合、酒気帯び状態で同じ作業をさせた場合よりも危険な状態になるのです。

 

まとめ

いかがでしたか?

今回は、過労運転の危険性についてご説明しました。

運転者だけでなくその関係者は、過労運転がいかに危険であるかを理解し、防止しなければなりません。

疲労を感じたときは、無理せず体を休めるようにしましょう。